診療室日記

「私のひとりごと」Part 6

アトピー児の親子関係


マスクされた薬疹

携帯電話

毛虱
アトピー児の親子関係
 投稿者: iwata (ホームページ)  投稿日: 4月8日(水) 20時02分42秒

 学校が休みの間は、やはり子供さんの患者さんが増えます。中でもアトピー性皮膚
炎の患者さんが新しく来院するケースが目立ちます。中には重症の患者さんもあり、
たいていは御両親がステロイド忌避の意向を持って来院されます。多くは幼児から小
学生ほどの年齢ですが、時に思春期成人型の患者さんも混じります。ここのところ、
こうした患者さんを多く診ていて前々から気になっていた点がありましたので、私見
を述べてみたいと思います。

小さい患者さんは概ねわがままな点がありますが、とりわけ、上記のように親の側に
ステロイド忌避の考え方が強い場合、お子さんの特徴として一見非常にわがままに見
える子供さんが多いのに気付きます。

そして、その一方で子供のわがままを許している父母の存在にも或る共通の特徴のよ
うなものが見えてくるのです。アトピー性皮膚炎にステロイドを使用しないと決めて
いること自体には別に問題はないのですが、子供への接し方に通常の親子関係よりは
若干特徴のある場合が多いのです。それは以下のようなものです。

#1 子供に対して強く叱ることはほとんどない。
#2 先ず、子供の気持ちや意見を優先する。
#3 子供の訴えに(ときに過剰とも思えるものであっても)、無視しないで対応し
   ようとする。
#4 両親のうち、子供に関わりあうのが常にどちらかに偏っている。
#5 非常に優しい父親

まだ他にもありますが、こうした傾向をもつ親御さんが連れてくるアトピー児には、
やはり子供さん側にも特徴らしきものがみられます。すなわち、訴えが常に過剰気味
で、痒みを常にヒステリックに訴え周囲が自分に関心をもち注意が向くまで掻破が続
きます。また、この間さまざまな要求が出てきます。従って、一見聞き分けが悪いよ
うな印象すらあります。加えてガマンは苦手。感情の起伏が大きい等々。

親御さんにしてみれば、可愛い我が子をなんとか早く良くしてあげたい一心ですし、
こんな病気になってしまったには遺伝的にもきっと親の責任があるものと思いこみ、
子供に対して負い目を持っておいでになるのでしょう。どうしても強く叱ることはで
きないようです。しかし、これが度を越すと子供さんは痒い、痒い、寝られない、ヒ
リヒリする、顔がほてるなどさまざまな訴えと同時に、親の反応をうかがっては徐々
にその度合いをエスカレートさせる傾向が出てきてしまいます。次第に病気のせいに
すれば、全てが許されてしまうと思い始め、やがて長じて後、学校でうまく行かない
のも受験に失敗したのも、友人との関係が壊れるのもすべてその為であると考えるよ
うになって来ます。

こうなると、もう親子関係は悪化の一途です。親が子供の奴隷のような形に陥ってし
まった成人型アトピー患者さんの親子を経験しています。ここまで悪化しないまでも、
通常のコミュニケーションがうまく行かないケースは往々にあり、今度はこれで親が
苦しみます。

困難であることは分かっています。しかし、病気に逃げるのではなく現実に立ち向か
う態度を小さい頃より養育しなければなりません。その意味でアトピー児の家庭教育
には父親の役割が重要であるように思えてなりません。ステロイドによらぬ治療を選
択される場合には、日常生活を見直す為の本人の強い意志が試されることが多いもの
です。従って、その重要度はより高いと考えています。

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マスクされた薬疹
 投稿者: iwata (ホームページ)  投稿日: 3月29日(日) 10時57分04秒

 薬疹を疑う患者さんの多くは皮膚科を受診されます。最近では何でも薬のせいにする
傾向が患者さん側にあり、治療がやりにくいという内科の先生もお出でになる程です。
しかし、薬剤、ひいては治療に関心をもつ意味から、少なくとも「医者まかせ」にしな
いで「情報の公開と説明」を求めようとする新しい姿勢がみられるようになりました。
これは医療に限らず世の潮流と云えますが、重要なことと思われます。

さて、薬剤を内服した記憶があって何らかの発疹が生じた時は問診上も比較的スムーズ
です。加えて、明らかに薬と関係ない発疹分布や全く他の皮膚疾患である場合も説明は
楽と云えます。一般に、薬剤や食物によって生じる皮疹や、ウイルス感染症、細菌感染
アレルギーなどの発疹は血流を介する関係から、概ね全身性左右対称性の分布です。そ
れに比し皮膚の一部分のみやその分布に偏りがみられたりする場合は、外からの影響、
たとえばカブレや外的刺激、さらには虫刺や外傷、光線等の原因を先ず考えてみるのが
皮膚科医の手順です。

ところが、何事にも例外があるのがこの世の常、ここに「固定薬疹」と云う薬剤誘発性
の発疹があります。口唇部や外陰部あるいは身体の特定部位に類円形で暗紫紅色の斑点
が出現し、大きさはコイン大から時に手掌大程になることもあります。ほとんど自覚症
はありませんが、斑点の色がなかなか消えず患者さんは「物にぶつけた記憶もないのに
紫斑みたいなものが出来てしまって....」と来院されます。これが全身性でも左右対称
性でもないが故に、患者さんもまさか飲み薬が原因とは毛頭考えて居られません。

昔から古典的解熱鎮痛剤と云われるアスピリン、アセトアミノフェン、ピリンの三大薬
剤にこの「固定薬疹」がしばしばみられることは知られています。これらは市販のかぜ
薬や解熱剤、頭痛歯痛止めに使われていますが、勿論これらにアレルギーがない人は大
丈夫です。しかし、そのアレルギーを有した人には内服後、多くは特定部位に暗紫紅色
の斑点が生じます。病院で処方される薬にも同様のアレルギー疹を起こすものがあり、
メフェナム酸、イブプロフェン、インドメサシンなどの解熱鎮痛剤の他、抗生剤、サル
ファ剤、バルビツール剤などが報告されています。

少し前に、小学5年生くらいの男の子がお母さんに連れられて来院しました。診察する
と、下口唇に暗紫紅色のコイン大の斑点があり約2週間前から消えずに残っている由。
お母さん曰く、「去年からこの子はカゼをひくといつも同じところにこんな斑点ができ
るようになりました。カゼと何か関係があるでしょうか?」。発疹を診てその典型的特
徴から即座にこの「固定薬疹」を疑いました。「何か薬を飲んでいませんか?」と尋ね
ますと、「ずっと前に病院でもらったカゼ薬が余っていたので、カゼの時に毎回飲ませ
てましたが..」(そうでしょう、そうでしょうとも)後日、確信を持って調べた結果、
やはりアセトアミノフェンが入ってました。この場合、同じ薬を内服した度に「固定薬
疹」が生じていた訳です。

このように簡単に原因が判明する場合はよいのですが、先週診察した患者さんには困り
ました。50才代のその男性は上腕内側と大腿部にコイン大とそれよりやや大きな暗紫
紅色斑が出現していました。実はこの患者さん、昨年の秋にも受診しておられました。
その時は内科から処方された薬の中にメフェナム酸を確認し、他に抗生剤も処方されて
いたようでしたが、おそらくメフェナム酸による「固定薬疹」と一応の決着をつけてお
りました。しかるに、先週、再び同様の発疹の出現をみて来院、「あれから注意して薬
も飲んでいないのにまた出来てしまったよ」と少々御不満顔。うーん、ホントに市販薬
も何も飲んでいませんか?しつこく質問する小生に、記憶違いを疑われたとも思われた
のでしょう、次第にムッとした表情。(こりゃ、イカン)、もう一度調べてみますから
と、ひとまず経過をみることに致しました。

さてさてその晩、薬疹情報や文献、報告例を調べているうちにある症例の考察欄にこん
な記載を見つけました。曰く、「魚介類からのマスクされた薬疹?」。ふーん、ナルホ
ドねぇ。そっかぁ。早速、翌日患者さんに電話して確認致しました。

「○○さん、刺身や活き作りはお好き? 最近ちょくちょく食べてませんでした?」
「そうだねぇ、ハマチやヒラメの刺身が好きで、ここんところよく買って食べてました
 けど、何か関係あるの?」。
(うーん、やっぱりそうか。ひょっとするとこれかも知れませんナ......)

実は、こんな機序を考えての話です。去年の「固定薬疹」の原因をメフェナム酸と安易
に決めつけてしまっていましたが、ひょっとすると同時に処方されていた抗生剤が原因
だったかも知れません。そして、(養殖の!)ハマチ、ヒラメ。
実はこれら養殖の魚には、あまり知られてはいませんが、大量の抗生剤が使われている
のです。もう、お解りでしょう。自分では薬を飲んだ意識は全くないのに、知らず知ら
ずに薬が体に入ってくる。すなわち隠された(マスクされた)薬疹! まことに、厄介な
世の中になったものです。

これを立証することはなかなかに困難ですが、それでも当面刺身を食さないようお願い
して、経過を診させて頂くつもりです。

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携帯電話
 投稿者: iwata (ホームページ)  投稿日: 3月16日(月) 23時55分10秒

 携帯電話のマナーについては、すでに様々なメディアで論議されています。ひところ
は新聞、テレビにそのマナーの問題が溢れていた感があるほどです。およそ人の居ると
ころ、この問題が付きまとう昨今ですが、当然ながら診察室もけっして例外ではありま
せん。

診察中に患者さんの携帯電話の呼び出しが鳴るはもはや日常ありふれた事柄で、同業諸
氏の集まりでも、その場の顛末がいささか誇張されて話題になります。曰く、「人をバ
カにしている」、「長々と話しこまれて、診察が中断してしまった」、「検査中に鳴っ
て最初からやり直した」等々。

運転中の着信問題に代表されるように、もともと電話というシロモノは携帯に限らず相
手の都合を全く無視しているところがあります。電話が普及し始めた頃も、きっと今と
同じようなマナーの問題が論議されたことでしょう。

確かに、診察や処置中に携帯電話が鳴っても即座に黙って0FFにしてしまう程には、
人は好奇心をコントロールできません。たとえ運転中であっても呼び出しが鳴れば「一
体誰からだろう?、早く出ないと切れてしまうかも」とアセるものです。何故か電話の
呼び出し音は、人をせかせる魔力があります。

病気について説明中にピヒョロー、ピヒョローと鳴ると、当方の話が突然中断されてし
まい、しばし、まことに具合の悪い間があります。相手の電話がたとえ短く終了しても
、話の再開は決してスムーズとはいきません。突然、予期せぬ中断を強いられて話の流
れを失ってしまい、急にシドロモドロになることもしばしばです。一方、患者さん自身
も突然のことに申し訳なさを感じるのか、話の理解がついお留守になるようです。

「今は電話に出られません。しばらくしてからもう一度、おかけ直し下さい」との”お
かけ直し”メッセージを有した機種もあるやに側聞致しますが、かようなシチュエーシ
ョンなら是非使って頂きたい機能ではあります。

先日も、オムツカブレの診察で若いお母さんが赤ちゃんをベットに横たえオムツをはず
したまさにその瞬間、ピリョロピリョロ。鳴りましたデス、携帯が。すると、そのお母
さん、下げ袋の中の呼び出し中の電話を探すため急いで中身をベットにブチあけました。
その時、オムツをはずされた赤ちゃん、シモが急に冷えたかオチンチンがすっくと立つ
やいなや見事なオシッコの噴水! なんとこれが袋から飛び出た携帯電話を見事直撃し
たには思わず拍手喝采(しそうになりましたデス)。ビショビショになった電話をあせ
って耳にあてがうお母さんの姿に、当方、正直云って笑いを堪えるのが必死でありまし
た(我が子と電話、一体どっちが大事なんじゃろか?)。

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毛虱
 投稿者: iwata (ホームページ)  投稿日: 3月6日(金) 23時16分12秒

「毛しらみ」pediculosis pubisは、pediculus(シラミ)の仲間でも外陰部を中心に寄
生します。外陰部でもとくに mons pubis(恥丘、ビーナスの丘)の陰毛部に好んで寄生
する為にこの名があるようです。また、別名 p. crabs の名がある如く、シラミの中で
も、その形態が crab(蟹)に似ていて、しっかりとした腕の爪で陰毛を握っています。
肉眼でもちょっと拡大鏡を使えば、おおよその形態をみることが可能ですが、顕微鏡で
さらに拡大してみると、モソモソと手足?を動かす様はなかなかに迫力があります。

さて、最近、この毛シラミ症をみる機会が結構あります。STD(sexually transmitted
disease性行為感染症)の中では、まあ可愛らしい部類?の性病と云えますが、それでも
当事者にとっては悲喜こもごもです。

この病気で来院される患者さんは概ね男性ですが、その接触感染源を問診してみると、
その多くは風俗店での疑似性交渉です。その道の専門家?に聞くと、名古屋地方は風俗
関係(ファッション.. ナントカ)の全国でも名だたる一大歓楽地だそうで、その数ざっと
数百軒、その内容のバリエーションの豊富さたるや他の類をみないとの話です。

ハテ、小生の理解ではこの種の店でのサービスは主としてfellatioによるものとばかり
思っておりました故、如何なる仕儀に至りて本症が感染するのか不明でありました。し
かし、先日、ある若い男性患者さんが、消え入るような声でカーテンの裏で教えてくれ
ました。「実は、ス・○・タしてもらったんですよ....」ナルホド、ナルホド! 
それで分かりました。かような疑似性行為があれば、当然毛虱が感染する訳ですナ。

治療はスミスリンパウダーを用いるのですが、この薬、当然虫体には効力がありますが、
虫卵には効きません。患部は必ずしも剃毛しなくても、成虫をやっつけた後虫卵から孵
化した幼虫を退治すればやがては駆除できる訳ですが、すでに剃毛してから来院される
方もいらっしゃいます。ただし、患部を拡大鏡でよく見ると、皮表にはまだ成虫が皮膚
にしがみつくように残存していることも多く、来院時にこれを先端の尖ったピンセット
でひとつひとつ除去してあげることもあります。ついでに、取り上げた虫体を顕微鏡で
見せてあげると、皆さん一様に「ひえぇー!」とその迫力ある姿に驚かれます。

さてさて、問題はそこからです。「アノー やっぱり彼女(もしくは妻)にも感染して
いるでしょうかねぇ?」なんともバツの悪そうな、申し訳なさそうな顔がそこにありま
す。そこからは御本人の、ガールフレンドや奥さんへの正直な告白が彼女の予後を決め
ることにはなります。なるべく、私は裁判官のような言動にならぬよう、同じ男として
いささかの同情をもって答えることにしています。「正直が一番ですよ、やっぱり」

ところで、先日、こんなことがありました。小学校1年生くらいの女の子をつれた若い
お母さん、診察室に入ってくるなりいきなり大きな声で「ケジラミなんですが....」
てっきりお母さん御本人が患者さんと思って診察ベットに案内しようとしました。(そ
れにしてもまあ、ケジラミ、ケジラミって大きな声で....)内心ビックリしましたが、
お母さんは子供を前に押し出して、「この子、ケジラミがついてしまって!」。

(そんなアホな、まだ毛も生えてないじゃろが....)「お母さん、あんまりなこと云わ
ないで下さいよ。」とお母さんをみると、しきりに女の子の頭髪をかき回してまた大き
な声で曰く、「ホラ、ここにケジラミの卵!」
「あのねぇ、お母さん。そりゃ頭シラミのことでしょ!」

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