診療室日記

「私のひとりごと」Part 2

イボ治療。ああ、勘違い!

虫、この厄介なもの。

若い成人の皮膚感染症

MRSA(耐性ブドウ状球菌)の心配

在宅医療

アトピー性皮膚炎と扁桃腺炎の病巣

アトピー性皮膚炎と扁桃腺炎の病巣
 投稿者:
iwata 投稿日: 10月6日(月) 11時59分13秒

 最近、アトピー性皮膚炎と慢性扁桃腺炎による病巣感染アレルギーの報告がな
され注目されています。もとより、すべてのアトピー性皮膚炎の増悪因子という
訳ではなく、アトピー性皮膚炎の数多くの増悪因子のひとつとしてとりあげられ
ているのですが、過去、アトピー性皮膚炎においてこのような病巣感染アレルギ
ーとの関連を指摘されたことはほとんどありませんでした。
他の皮膚科疾患(掌蹠膿疱症や急性滴状乾癬、多形滲出性紅斑、アナフィラクト
イド紫斑など)では、病巣感染アレルギーとの関連はよく知られていましたが、
アトピー性皮膚炎においてもその関連に言及した貴重な報告です。

東京医科歯科大皮膚科、西岡教授は以前からアトピー性皮膚炎とくに成人型アト
ピー性皮膚炎のおける増悪因子の検索を重要視されておられ、なるべくステロイ
ド外用剤に頼らない治療を模索されておられる先生です。

今回、西岡教授の外来で、数多くの増悪因子の中で扁桃腺炎や歯槽膿漏、虫歯な
どの感染病巣がアトピー性皮膚 炎の増悪因子として働いている可能性のある患者
さんについて調査がされました。その結果、病巣感染につき検査し関連が強く示
唆された方々について扁桃摘出などの手術を耳鼻科で施行したところ、6例中2
例の方が、術後1年以上にわたり顔面や頚部のビマン性紅斑や丘疹(ブツブツ)、
体幹部の貨幣状のジュクジュクした湿疹局面が消失し、良好な経過をたどってい
るとの報告です。

そう云えば、先週来院された成人型アトピー性皮膚炎の女性が風邪をひき、喉が
相当痛くなり、顔面の潮紅落屑が極端に増悪したことがありました。さしずめ、
この方などは扁桃マッサージ検査の適応があるかも知れないと考え、次回耳鼻科
へ扁桃病巣の診察をお願いしようかと考えました。

まこと、アトピー性皮膚炎の増悪因子は多岐にわたり個々の患者さんが、それぞ
れ異なった増悪因子をお持ちです。皮膚の見かけの病状は同じようにみえても、
その依って来る誘因が千差万別です。

今に、「アトピー性皮膚炎」という病名も「アトピ ー性皮膚炎症候群」という名
前に置き換えられるかも知れません。

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在宅医療
 投稿者:
iwata 投稿日: 10月2日(木) 16時46分55秒

 最近、在宅医療の患者さんからの往診依頼が多くなりました。寝たきりの高齢者
の方々が増えてきて居られます。それにともなって、内科や外科の先生が在宅医
療で診て居られる患者さんで、ときに皮膚病に関して往診依頼を受ける機会が増
えてきました。

往診依頼のある皮膚疾患は褥瘡(床ずれ)と疥癬(ヒゼンダニ)の検診が多いの
ですが、それ以外に乾皮症に伴う老人性皮脂減少性の湿疹変化、爪の管理、陰股
部のカンジダ症など最近、いろいろと増えて来ました。

今後、未曾有の高齢化社会の到来とともに医療費の増大さらに低成長経済などの
要因により医療構造改革が行われ病院での長期入院は難しくなって来ています。

それにつれて在宅医療の割合は確実に増加致しますが、在宅での長期の介護、治
療にはやはり家族ばかりではなく社会的な支援の必要性を強く感じます。

先日も、ある内科の先生の依頼で在宅の褥瘡(床ずれ)の患者さんの診察に同行
致しました。診察と褥瘡処置が終了し、引き続き皮膚科 往診で2週間に一度病状
を見させて頂くことを告げましたところ、患者さん(高齢のお婆ちゃん)の世話
をしている嫁とおぼしき中年女性から思いがけない言葉が返って来ました。

「先生達が毎回お出で下さるのは有り難いのですが、その為にかえって入院でき
なくなって困ってますよ。私は実家の父もこの同じ町にいますが、父も寝たきり
で実家の母一人ではとても面倒がみられないので、実家にも行かなければならな
いんです。出来れば、お婆ちゃんは在宅ではなくて入院で治療してもらいたいの
ですが、なんとかならないでしょうか?」

患者さんの為の在宅医療が、家庭での支援体制が整わない為にかえって家族の重
い負担になっている例をいくつかこれまでも見てきました。お婆ちゃんの仙骨部
(臀部)に出来た大きな床ずれ(褥瘡)の皮膚欠損を思いながら、家族のマメな
管理がなければ到底上皮化もおぼつかない事態を一体どうしたらよいか、実に暗
澹たる気持ちで患家を後にしたのでした。

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MRSA(耐性ブドウ状球菌)の心配
 投稿者:
iwata 投稿日: 9月20日(土) 22時44分02秒

 「暑さ寒さも彼岸まで」、ここへきて夏の暑さも消え突然秋を感じさせる気温変
化に日頃忘れている自然のサイクルを思い出します。それに伴い、夏の風物詩と
も云える小児の「とびひ」もめっきり少なくなりました。

「とびひ」の原因は虫刺されなど小さな傷に感染した黄色ブドウ状球菌という細
菌が局所で増殖して起こります。病変部では菌が出す「表皮剥脱素」と云う毒素
によって表皮がつるっと皮がむけてビラン面が生じカサブタができますが、放置
しているとそこをひっかいて他の部位に菌を接種し次から次へ病変を広げてしま
います。

治療は抗生物質の内服と外用をすれば、すぐ乾いてきて治ります。ただ、一度治
っても大人のように皮膚が丈夫でない子供さんでは、毎年罹患したりひと夏に二
度、三度とかかってしまう場合もありその都度治療が必要です。

通常、治療に手こずるような病気ではありませんが、この夏、とても厄介な「と
びひ」に遭遇しました。2才の女の子が鼻と左眼の回りに典型的なとびひの 皮疹
をもって来院されました。いつもの如く、セフェム系抗生剤のシロップとアクロ
マイシンの外用剤を処方して、4日後に拝見することに致しました。

約束の再診日に、もうすでに乾燥化が始まって治りはじめている頃かと考えなが
らお名前を呼んで診察室に入って頂きました。すると、どうでしょう! 皮疹は
良くなるどころか鼻の周囲から両眼周囲にまで拡大し、ビラン面は増えて汚濁し
た痂皮(カサブタ)もところどころ付着しています。

さらに、驚いたことには両腋窩から上腕にかけて、また、首から胸にかけても一
面に発赤し発熱もみられるようです。これは一体どうしたことか!「お母さん、
薬を飲ませなかったんですか!」と疑いつつ尋ねながら、事態が急変し或る典型
的な疾患に移行しつつあることをとっさに心配しました。

「ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群:SSSS」。この病気は、黄色ブドウ状球菌
が産生する菌体外毒素:(表皮剥脱素)による全身中毒反応で、広範に皮膚が発
赤し、新生児などでは 皮膚の表皮がズルズルと熱傷のようにむけてしまう重篤な
疾患です。即座に入院して抗生剤の全身投与(点滴)が必要で猶予がありません。
お母さんに事の重大性を告げて説明し、市民病院小児科へ即日紹介移送の手続き
をとりました。お母さんは「薬はしっかりと3回、日数分内服させ軟膏の外用も
怠らなかったのに一体どうしたんですか!」と心配のあまり興奮気味に詰問され
ます。

通常、簡単な「とびひ」状態でかつ小病変の場合、初期にしっかりと抗生剤を内
服すればこのような事態にはなりません。今回もお母さんの話では内服は確実に
行われた由。どうにも合点がいきません。

しかし後日、市民病院からの返事をみて驚きました、と同時にやっと納得がいき
ました。返信には次のように書かれていたのです。

「尚、○○ちゃんの皮膚病変部からは”MRSA”が培養され、抗生剤点滴には
バンコマイシンを使用しました。以上」

なな、なんと! 我々のような前線の皮膚科外来にもMRSAによる「とびひ」
がみられるようになって来ています。MRSA、これは通常の抗生剤には耐性を
有したブドウ状球菌で、特殊な抗生剤(バンコマイシン:病院で使用)でないと
やっつけることが出来ません(云わば、最後の切り札的治療が必要です)。

すでに、抗生剤を大量に使用する病院等では、ブドウ状球菌というありふれた細
菌の中に通常の抗生剤には耐性を示す(効かない)この特殊な耐性ブドウ状球菌
(MRSA)がみられ、院内感染対策上大きな問題となっています。

今回のケースでは、当初に使用した一般的な抗生剤(通常はほとんどこれで対処
可能)も原因菌がMRSAであった為に全く奏効せず、単なる「とびひ」が患児
の低年齢もあいまって、SSSSにまで進行してしまったと考えられます。

そういえば、最近読んだ医学ジャーナルにも「21世紀は感染症との新たな戦い
の時代」との見出しがありました。従来、抗生剤という武器によって数々の細菌
性感染症を克服してきた人類は、ここへ来て、巧妙な敵(細菌)の進化によ って
さらなる手強い細菌群と、再び対峙しなければならないようです。

我々前線の外来でも常にこうした耐性菌の存在を忘れないよう、今回再度気持ち
を引き締めた次第です。

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若い成人の皮膚感染症
 投稿者:
iwata 投稿日: 9月11日(木) 21時07分16秒

 最近、通常は子供さんの頃に罹患することが多い皮膚疾患が、若い成人の方々や
若いお母さんにみられるようになりました。

例えば、リンゴホッペ病(伝染性紅斑)、ミズイボ(伝染性軟属腫)、イボ(尋
常性疣贅)、手足口病、ヘルパンギーナ、みずぼうそう(水痘)などです。

通常、これらの疾患は学童期の頃までに多くは罹患し、免疫を獲得して大人にな
ってからは罹らない疾患群です。しかし、昨今状況が少しばかり変化して来てい
るのでしょうか? 少子化が進み子供の頃からあまり大勢の子供同士で遊ぶ機会
が少なくなってきていることが、子供時代にこうした疾患に遭遇するチャンスを
減らしているのでしょうか? 確かな統計に基づいた推論ではありませんから、
ハッキリとしたことは分かりませんが、どうもそんな傾向があるように思えてな
りません。

上記の疾患を、いずれも外来でここ1年半程の間に大人の方で経験致しました。
手指足底のイボ(尋常性疣贅)は大人の患者さんもけっして珍しくなく、 ここへ
来て増加して来ているかどうかは分かりませんが、ミズイボとなると大人の患者
さんは多いものではありません。ミズイボに限らず、こうした疾患の多くは子供
さんから若いお父さんやお母さんに感染してみられたケースでした。

皮膚科医ばかりでなく一般の方も、上記のような疾患は通常、子供の病気との認
識がある為か「リンゴ病みたいですよ」と病名を告げると、一様に「まさか!」
という顔をされます。でも、「そう云えば、下の子供がこの前、同じような症状
で、小児科で診断されてましたわ」と後で気付かれることもしばしばです。
やはり、お母さんも免疫をもっていらっしゃらなかったようです。

さて、問題は若いお母さん、とくに妊娠期間中に上記のようなウイルス疾患に罹
患するケースがあることで、上記のうち注意を要するのはリンゴ病と水痘です。
(風疹は予防接種のお陰で心配が少なくなっています)

リンゴホッペ病(伝染性紅斑)では妊娠初期に罹患すると、少ないですが、胎児
水腫の報告もあ りますし、みずぼうそう(水痘)では妊娠初期では流産、分娩前
4日以降に発疹が出現した時は新生児に重症の水痘を生じさせてしまうなどの恐
れがあります(母体での抗体産生と胎児への抗体移行が出産に間に合わない)。

こうした若いお母さんの中で、とくに学童と接する機会のある学校や幼稚園の先
生は妊娠期間中には注意が必要です。先週も、妊娠8ケ月の若い保母さんが、み
ずぼうそう(水痘)に罹って来院されました。現在、水痘ウイルスに対しては有
効な薬剤(抗ウイルス剤)が開発されていますが、その内服に関してはやはり産
科の先生と相談しなければなりません。大人で水痘のような急性ウイルス発疹症
に罹患すると一般に症状は激しく、そのお母さんも顔にブツブツが一杯でてしま
いました。産科の先生のお考えもあって今回は内服は処方されませんでしたが、
今週になってようやく熱も下がり個々の水疱にもカサブタがつきはじめました。

しかし、この若いお母さん、抗ウイルス剤という薬があってもこれを妊娠中 に内
服して、お腹の赤ちゃんへの薬の影響がないかどうか心配であったことと、一方
内服しないで自分の水痘を自然経過で見守ることによって、今度は水痘ウイルス
が胎盤を通じて胎児に感染し何らかの障害を起こすのではないかと云う二重の心
配に夜も寝られなかったと訴えて来られました。此の点に関しては、幸いすでに
妊娠8ケ月にあって妊娠初期ではなく胎児の器官形成期はすでに終了していて、
薬剤(抗ウイルス剤)や病原体(水痘ウイルス)の胎児への影響は受けにくい時
期であることを説明しどうにか安心して頂きましたが、

こうした問題は、少子化がどんどん進行している我が国で今後、ますます増えて
来るのではないかと心配しています。世の中、箱入りのお嬢ちゃん、坊ちゃんば
かりになると免疫環境からみれば逆に具合の悪いことになるやも知れません。
(団塊世代の小生は、免疫だけはしっかりついているようです....)

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虫、この厄介なもの。
 投稿者:
iwata 投稿日: 9月5日(金) 20時19分59秒

 夏の皮膚病には種々ありますが、虫による皮膚病も代表的なものです。
単に虫刺され(虫刺症)と云っても様々なものがあり、皮疹から原因虫の推察が
つくものと、そうでないものもあります。その中で以下、毎日よく遭遇する皮疹
とは....。

# ダニ類、
 身体のあちこちに軽いしこりをもった小紅斑が点在し、やたら痒くて朝起きる
と増えているなど発疹や問診から診断できます。しかし、患者さんにこれをダニ
による虫刺症であることを納得して頂くことは実に大変です。

「ダニですって! 家は昨年新築したばかりで掃除も毎日やってますし、布団だ
って天気の日にちゃんと日光消毒してるんですから....もう!」
             (日光消毒では不十分のこともあるんですが....)

「虫刺され? でも、発疹があるのは家で私ひとりなんですよ、 ふん!」
           (虫刺アレルギーは人によって程度が違いますが....)

「宅のチャッピーちゃん(ペットの犬)はキチンと洗ってま す!」
           (だからぁ、ノミじゃなくてダニですってば........)

相手が見えないダニ(ノミと違って顕微鏡でないと見えない)の発疹であること
を御理解頂くはなかなかに難しく、中には憤慨される方もいらっしゃいます。
部屋全体や畳、ジュータンを丹念に消毒する他に、布団を温風による熱消毒(昔
流行った布団乾燥機)するのも良いようです。

# 毛虫皮膚炎
 体の一部分に猛烈に痒い赤いブツブツが集簇して出現し他の部分に点々と散布
された同様皮疹が散見されます。毛虫の毒毛が身体の一部に付着して軽く刺さり
痒いので擦るうちに毛があちこちにばらまかれて散布疹が出来上がります。ある
日、腕や脇腹に突然出現するのでビックリされて来院されます。

これも身体の中から、何か内蔵でも悪くなって発疹が出たんじゃないかとやたら
心配する方や、絶対に帯状疱疹(帯状ヘルペス、おびくさ)だと主張される方な
どいろいろお出でになります。こんな方に「毛虫ですよ」なんて説明しよう もの
なら言下に、

「家には毛虫なんていません! 昨日は外にも出てないし、そもそも服の上から
刺されますかいな、そんなアホな!」と。
(でも、干しておいた布団や下着に毛虫の毛が飛んで来て付着していることもあ
りますし、よくよく聞いてみると、そういえばおととい庭木の枝をはらったこと
を後で思いだすなんて方もあるんですねぇ..コレガ。それに洋服の襟口から中へ入
り込むことだってあるんですが....)

外用剤を塗って少し御辛抱頂ければ治癒致します。

# ノミ(ネコノミ)
 下肢、とくに足首の回りに集中してときに小さな水疱までつくってしまう猛烈
に痒いブツブツ。昨今、ホントに多いです。

「ネコノミの被害ですね。」と私。

「ええっ! ノミですかぁ? 家にはネコなんていないけど....」

 (でも、お庭に野良猫が来てますよ、きっと。お洗濯を干している時に足元で
刺されているんですが、気が付いてませんよねぇ。また、公園の砂場は野良猫の
公衆トイレ、ここで遊 ぶお子さんやお母さんの足首にチクッ!気が付かないでしょ?
皆さん、アリに喰われたとおっしゃるんです....。絶対アリだと自説を譲らなか
った方もいらっしゃいましたけど..)

ペットがいたらよく見て下さい。ノミは見えるんですから.....。
うちのミーちゃん(ネコ)は夜遊びしません....ナンテ コト アリマセン ヨネ。

後日、ノミを発見した中年の御婦人、曰く

「早速、ミーちゃんにノミよけ首輪しときましたわ!...」

(ウーン、ダメじゃー。ミーちゃんからノミが飛び散ったら、奥さん、もっと刺
されるやんけ....お願いだから分かってちょ! 駆除しなくっちゃダメだってこ
と.....)
獣医さんに相談したりペットショップに行ってノミ駆除用薬剤を御購入下さい。

さて、先日の早暁(なんと、朝の4時半!)、突然電話が鳴りました。
寝ぼけ眼で意識もハッキリせぬまま受話器を握ると、大きな声が聞こえました。

「ムカデに咬まれてまったでよぉー、ちゃっと(はやくの意)診てちょー」

う ーん、さすがに年寄りは朝が早い! 聞けば、家の物置で庭掃除のほうきを握
った拍子に、大きなムカデと握手してしまった由。

まこと、まだまだ当市は田舎町デス、ハイ。

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イボ治療。ああ、勘違い!
 投稿者:
iwata 投稿日: 8月28日(木) 21時19分51秒

 前回、イボ治療の偶然の試みを期待してこの欄にも書きました。
その後、3週間ぶりに患者さんとお母さんが来院されました。はてさて、キウイ
の汁の効果は如何に? と期待に胸躍らせて診察させて頂きました。
ところがどうも様子が変です。お母さん曰く「キウイを塗っても何の変化もない
んです」とやや御不満顔。「赤くもならないんで、2、3度塗って止めてしまい
ましたよ」。
「でも、坊ちゃんはキウイでカブレるんじゃなかったんですか?」と私。
「ええ、食べるとカブレて皮膚がボコボコに腫れて、痒くて目の回りも腫れて人
相も変わってしまうんです。でも翌朝には元にもどってるんですけどね。」
「ん? 翌日には元にもどるって! ひょっとして、それって(蕁麻疹じゃあ
りません?と云いかけて口の中で一人モゴモゴ)」
「カブレでしょ? 痒くてボコボコなんですけど....」とお母さんも怪訝そう。
もしやと思い、お母さんに蕁麻疹の皮膚病アトラスの写真をお見せすると、
「ああ、これこれ! このカブレだ わね」

小生、しばし無言。と同時に己の粗忽さに我ながら意気消沈。
どうも、お母さんは蕁麻疹のことをカブレと表現なさっていたようです。あろう
ことか、私はこのお母さんのおっしゃるカブレという言葉を、勝手に我々の領域
でつかう「カブレ」すなわち、接触皮膚炎のことと解釈してしまっていたのです。
無論、これではキウイの汁をどんなにイボに塗布してみても私が期待した「カブ
レ」は起きるハズもありません。
食物などで生じる蕁麻疹はアレルギーの中でも1型(即時型)というもので、カ
ブレ(接触皮膚炎)の際の4型アレルギー(遅延型)とは異なるタイプのもので
す。蕁麻疹の反応は、皮膚のうち表皮の変化を殆ど伴わず、真皮血管での透過性
が亢進することによる浮腫が病変の主体です。その血管拡張と浮腫が即時型アレ
ルギーと呼ばれる機序によって誘発されています。
これに対して、カブレ(接触皮膚炎)の反応は表皮真皮の両者に変化を伴い、リ
ンパ球がアレルギーの主体として働く遅延型アレルギーとい う機序によって起こ
ります。そして、イボのDNCB療法というのはまさにこの接触皮膚炎型アレル
ギー(遅延型)反応を利用したものにほかならなかったのです。

もとより、「蕁麻疹」と「カブレ」の違いを一般の方に求めてはいけないハズで
した。それが分からないが為、皮膚科を受診される訳ですから....。
こんな初歩的な事柄も忘れて、患者さんの表現される言葉をつい自分の仕事領域
内の言葉に勝手に直訳し解釈してしまったところに、私の失敗がありました。
問診の不備から来る事の誤解と今回のイボ治療には別な方法を選択しなければな
らない旨を説明させて頂き、当方の至らなさをお詫びした次第です。
まこと、言葉は難しいもの。私にとって貴重な教訓となりました。
(それにしても、あの子がキウイの蕁麻疹ではなくて漆にカブレるようなことが
あれば、あるいはイボの治療に使えたかも知れないのに....と少しばかり残念では
ありました。)

少々間の抜けた事の顛末、前回からお読み頂きました皆様には心より お詫び申し
上げます、ハイ。

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