イボ治療、偶然の試み。
手足に好発するイボ、夏休みになって多くの子供さんがイボ治療に来院されます。 ページのトップへ戻る
掻破依存症
アトピー性皮膚炎に関して、最近新たな捉え方が提唱されようとしています。 ページのトップへ戻る
痒疹、その一つの原因
痒疹(身体中に痒い丘疹が孤立性に多発する難治性疾患)で以前から通院中の ページのトップへ戻る
水 虫
水虫の季節です。昨年も来院されたAさん、今年も同じ6月になってまたお出 ページのトップへ戻る
アトピー皮膚炎における睡眠不足
アトピー性皮膚炎患者さんの予約診療を初めて1年程経ちましたが、この間多くの
投稿者: iwata 投稿日: 8月21日(木) 23時41分42秒
イボ(尋常性疣贅)はヒト乳頭腫ウイルス(ビールス)といわれる病原体に感染し
て生じます。したがって、小さな傷が出来やすい手足に好発し、ごくありふれた皮
膚病として多くの患者さん、とくにイボに対する免疫が獲得されていない子供さん
達にみられます。
さて、疾患の原因は解明されているのですが肝心の治療薬となると、まだ有効な抗
ウイルス剤が開発されていないが為に、現状では物理化学的方法(物理的方法:液
体窒素による冷凍凝固や電気焼灼、化学的方法:ブレオマイシン局注、DNCB法
やトリクロール酢酸法など)による治療が行われているのが現状です。いずれも強
い痛みや痒み(カブレ)を伴い幼い子供さんの患者さんが多いイボ治療は皮膚科の
悩みの種です。
この中で、比較的痛みを伴わない方法としてDNCB法と云うものがあります。
尋常性疣贅(ウイルス性イボ)にDNCBを用いる方法の原理は、人工的な化
学抗
原であるDNCB(dinitrochlorbenzene)でイボの病巣にカブレを起こさせて治療
する方法です。
実際の方法は、先ずDNCBで感作(カブレを起こすようになること)成立させる
準備から行います。これはパッチテストのように本溶液を前腕や背中に48時間張
り付けておき反応をみます。その後、2週間後に誘発テストをして同様に48時間
後の反応をみます。こうしてDNCB感作が成立したのを確認して後、次ぎに実際
にイボの病巣にDNCB液(カブレを起こす濃度)を塗布してカブレを誘発してイ
ボの治療を行っていく方法です。
(ただ、以後その患者さんはDNCBに対してカブレを生じる身体になりますが、
DNCBは自然界に存在しない人工抗原ですし、日常生活ではまず触れる機会のな
い化学物です)
こうした化学物を用いて炎症を誘導する方法には、トリクロール酢酸を用いて化学
熱傷を起こさせる方法もありますが、上記DNCB法が接触皮膚炎というアレルギ
ー反応を利用するのと異なり、薬品そ
のものによる皮膚腐食(化学熱傷)を利用す
る点が違います。
そんな中で、DNCB治療は準備に若干時間がかかりますが、痛みがない(痒みは
伴います)方法として、子供さんにも良い方法と云われています。
(当院ではまだ実施していませんが....)
イボの治療は昔からイボ神様やイボ地蔵様などの信仰があり、お参りするとよく治
ると云われます。ヨーロッパでも切った肉にイボの病変をなすりつけると肉片にう
つって治るとの民間信仰がありますし、米国でも「トムソーヤの冒険」の中にもイ
ボ治療のまじないの話が出てくるそうです。一種の暗示効果ですが、イボウイルス
に対する自己の免疫が誘導され自然消退する現象かと思います。いずれにしてもそ
のようなリンパ球による免疫が誘導されないと完治しません。
どうしても痛みや痒みを伴う方法がダメな方はヨクイニン内服(ハトムギエキス)
がお勧めですが、これが人によって効果がマチマチです。ヨクイニン単独内服で奏
効しない時は、麻杏ヨク甘湯(マオウ
含有、他にヨクニインも含有されてますが、
不足分は別途ヨクイニン単独で補う)を併用する方法が良いようです。同時に、外
用消毒として「強酸性水」塗布を試みることもあります。
さて、前置きが長くなりましたが、先日、ある小学生のイボの患者さんが来院され
ました。お母さんのお話では、息子さんはイボが手足から始まり顔、四肢など広い
部位にたくさん出てきてしまった由です。諸処、皮膚科を受診されたそうですが、
どこも液体窒素による痛い方法ばかりで本人が嫌がって治療が続かないそうです。
また、ハトムギエキスの内服ももう1年も続けているのに小さなイボが次々に生じ
てホトホト困っておられるようです。なんとか、痛くない方法でイボをとることは
できないでしょうか? と難題を持ち込まれました。
正直云って当方も困りました。心底、近郷のイボ神様へのお参りをお勧めしようか
と思い、雑談混じりにその話をしてみると、すでに昨年そのお参りも済ませた由。
かくなる上は、前述のDNCB法を考える
べきかと思案しました。そこで、これを
実施している県内の大学病院を紹介するべく治療法の説明を始めました。
すると、「そんなぁ、大学病院なんてとても通院、無理ですよ」とお母さん。
ハテ困った。ウーン、いよいよ当院でDNCB治療を文献集めて実施しなくちゃダ
メかなと、この治療に経験ない当方は当惑気味。しかし、しばし沈黙があった後、
次ぎにお母さんが独り言のようにつぶやいた言葉に、小生まさに神の啓示を得たよ
うな気になりました。
「カブレねぇ。キウイだったら、この子ムッチャクチャ、カブレるのに.....」
前医と同じヨクイニン(ハトムギエキス)内服の処方箋を書き上げた私は、次ぎの
瞬間思わず叫んでました。
「お母さん! キウイの汁、しぼって、イボに塗ってみません?」
(はてさて、事の顛末は次回に)
投稿者: iwata 投稿日: 8月9日(土) 13時14分06秒
アトピーにおける「掻破依存症」(小林美咲先生提唱)という概念につき大学新
聞の記事の中で、慈恵医大皮膚科助教授上出良一先生が解説なさっておられます。
以下、記事から一部引用(慈大新聞 1997 7.25:緑蔭随想から)。
「最近、重症の成人型アトピー性皮膚炎が増えている。その症状は単純なアレル
ギー反応だけでは到底説明がつくものではない。幾重ものマスクをかぶった皮膚
症状を一枚一枚剥がしていかなければならない。まずは掻破である。痒みに耐え
かねて掻いているうちにそれがクセとなり、遂には掻破しなくてはいられない「
掻破依存症」に陥ってしまう。なかには全く痒くないのに掻くという極端な例も
ある。習癖的掻破の誘因はやはり家庭、職場におけるストレスである。安らぎの
得られない家庭、親の過干渉、会社では人間関係、残業その他、戦後日本の発展
の蔭の部分が今かたちを変えて現れている。そのストレスを癒すための代
償行為
として皮膚を掻く、擦る、つまむ、つねるなど、様々な皮膚損傷行為を行ってし
まう。簡単に言えば子供の指しゃぶりである。日常生活の中にしっかり組み込ま
れ、知らず知らずに日夜掻破行動を行っていることに、まず気づいてもらうこと
から治療が始まる。.........」(上出良一助教授)
このような状態を呈しておられる方々の診察には、当然時間が必要です。その方
のバックグラウンドを知らずして、ただ外用剤や内服剤を処方するだけでは到底
解決はおぼつかないと思えます。現在、アトピー皮膚炎なかんずく成人型アトピ
ー性皮膚炎に悩んでおられる方々は、日本の診療体系の狭間に落ち込んでしまっ
ておられます。大学病院から町の診療所に至るまで、診察時間が絶対的に不足し
ているのが現状です。常に外来が忙しくて、ロクに話も聞いてもらえない状況で
は、個々の患者さん別にきめ細かな対策を考える時間がない為に、多くの方にあ
る程度の効果を上げることが出来るステロイド外用剤を詳しい説明もなくポンと
処方して済ませてしまう状況がありはしないでしょうか? ひいてはこれがステ
ロイド依存やステロイド皮膚炎を作り出してきたのではないでしょうか?
現行の保険制度の枠内では、残念ながら全くこの点の配慮がなされていません。
先ず、私共がしなければならないのは、個別に充分な診察時間を確保できるよう
なシステム作りから始めなければいけないと真剣に考えています
投稿者: iwata 投稿日: 8月1日(金) 08時33分57秒
Mさん、なかなか経過が思わしくなく治療と同時に原因検索を種々続けて来まし
た。外用、内服治療の他、PUVA(紫外線療法)も行っても、思うように治療
効果があがらず御本人も当方も本当に困って居りました。痒疹の原因は多岐にわ
たり、50代男性のMさんには健康診断も兼ねて総合病院で成人病から癌検診ま
で一通りの検査を受けて頂きましたがいずれも異常なく、まこと「痒疹」は厄介
と溜息が出始めました。
そこで、再度問診を詳しく聞き直しましたところ、皮疹出現約5ケ月前頃に数度
にわたり歯科治療を受けておられたことを聞き出しました。
さて、体内金属なかんずく歯科金属アレルギーによる痒疹の報告をにわかに思い
出し、早速歯科金属パッチテストをやらせて頂きました。
すると、11種の歯科金属シリーズの中でパラジウムが明らかに陽性と出ました。
まだ此の時点で、Mさんのみならず私自身も歯科金属と皮疹の関連を
疑っており
ましたが、Mさんを通じて歯科の先生にその材質を伺いましたところ、確かに
金銀銅パラジウムの成分が使われている由。
はて、本当にこの歯科金属を一度除去してもらって(実は同じ材質で3本もあり
ました)、痒疹が治るでしょうか? 「もし皮疹が消失しなかったらどうしよう」
私自身の迷いをよそに決断力あるMさんはさっさと歯科の先生にお願いして3本
とも歯科金属を除去しプラスチック製の仮の歯冠をかぶせて来院されました。
金属を除去して4週間、なんと!あれほど頑固だった皮疹が見事にキレイになり
始めました。以前は同じ治療を施していてもおよそ反応が悪かったのに、どんどん
痒疹が消退し始めたのです。これには正直云って私自身がビックリしましたが、
「もっと早く、パッチテストして原因をしっかり調べてくれなくちゃダメですね」
と、Mさんに嬉しそうではあるが少々恨めしく云われた時には、長い間痒みで悩ま
せてしまって本当に申し訳なく思いました。
(こころよく治療に協力し
て下さった歯科の先生にも感謝して居ります)
現在、Mさんは歯科の先生の勧めもあって、1年程、仮の歯冠をかぶせておき皮疹
消退の様子をみて別の対策を考えて頂くことにしています。
やはり、原因検索は諦めずにひとつひとつやってみることが大事であることを
痛感した次第です。
投稿者: iwata 投稿日: 7月18日(金) 23時28分55秒
でになりました。「今年も水虫ができましたよ」とAさん、カルテで記録をみ
ると、昨年は6月に1回のみの来院で10g の抗真菌剤のクリームが1本だけ
でした。「去年も説明したと思いますが、水虫治療は夏なら最低でも2〜3ケ
月はかかりますよ、表面上キレイになり痒みもなくなった時点からさらにダメ
押しが必要ですね。」と私。こんなやり取りが毎日のように続く季節になりま
した。
どうも、Aさんは症状がなくなった時点で水虫は治ったと思われたようです。
確かに皮疹もなく痒みもぜんぜん無いところに外用剤をまだ塗布するなど、人
情からして不合理に思えます。しかし、水虫(白癬菌:カビ)はなかなかに手
強いのです。勢いがある時は菌糸の状態でどんどん増殖していますが、薬など
で発育が阻害されてくると胞子の状態でじっと耐えています。
この段階では一見治癒したようにみえるのですが、温度(体温)と湿度(汗)
という
カビが生える条件がそろうとまたぞろ菌糸を出して増えるのです。
昔から水虫の薬を発明したらノーベル賞だなんて云われますが、いまや水虫の
薬ではとてもノーベル賞はもらえません。すでに、極めて優秀な外用剤や内服
薬が開発されているからです。あとはしっかり塗布する根気が必要なのです。
私は、一日のうちで足が靴下に包まれ靴の中でムレてしまう、カビが一番勢い
をもつであろう昼間に薬がついているようにする為、毎朝、靴下をはく前に薬
を塗布することを勧めています。こうすれば、患部ばかりでなく靴下と靴にも
若干の薬がついてそこについた白癬菌もやっつけることが可能かも知れません。
これを習慣化して夏なら約3〜4ケ月外用して頂ければきっと良い結果が得ら
れることでしょう。まさに、「もう治ったと思った時から2ケ月外用でダメ押
しを!」
投稿者: iwata 投稿日: 7月17日(木) 11時10分27秒
成人型アトピー性皮膚炎の患者さんとお一人2時間程面談致しました。
そこで、気が付いた点を述べてみたいと思います。
先ず、多くの方の増悪因子を伺ってみると、非常に多いのが「睡眠不足」です。
大学生になって下宿したが下宿代捻出の為に、時給の高い深夜コンビニのアルバイト
をするようになって急激にアトピー性皮膚炎が増悪した方。あるいは、看護婦さん、
ガードマンさん、タクシーの運転手さんなど深夜に仕事があるような方、工場勤務で
3交替で深夜仕事をする方など皆さんに身体と精神に強いストレスと睡眠不足が共通
しています。
体の中の副腎皮質ホルモンは夜寝ている間に副腎で作られ、午前中に血中濃度が
ピークになるようになっています。従って、夜寝ないでいくら昼間睡眠をとっても
このピークはできません。文明が発達し24時間仕事できるような社会になっても
長い人類の遺伝子の歴史からみれば、我々
の体のリズムはそうたやすく変わるもの
ではないようです。その意味で体内の副腎皮質ホルモンが作られるべき夜の
「睡眠不足」が問題になります。
このような生活リズムの変化は、アトピー性皮膚炎の患者さんには御本人が自覚
する以上に身体へ強いストレスとなって表れるものです。従って、脱ステロイド
療法を目指していても生活パターンを改善する意志がないと非常に困難です。
いろいろな事情が人それぞれにありますから、これを変えることは難しい場合も
ありますが、やはり身体の為に夜しっかり寝られるような生活を目指して頂きたい
ものです。