研究内容
教室の研究テーマ
名古屋大学大学院医学系研究科機能構築医学専攻

生体管理医学講座 麻酔・蘇生医学 准教授 西脇公俊

研究内容の要約

〔研究の特色と沿革〕

 麻酔学は臨床部門の一つであるが、刻々と状態の変化する手術患者の麻酔はまさに生理学や薬理学の応用科学といってよい。このため、麻酔下における生体侵襲反応を生理学的、薬理学的に研究することから始まり、救急、集中治療やペインクリニックにおける研究へと発展しつつある。

〔現在の研究内容と今後の展開〕

1) 肺水腫の成因に関する研究

 神経原性肺水腫を起こすフィブリン肺水腫ラットモデル等を用いて研究を進めてきた。交感神経終末にノルアドレナリンと共存する神経ペプチド(ニュウロペプタイドY)が肺血管透過性亢進に重要な役割を果していることを示し、その受容体拮抗薬による肺水腫治療の可能性、中枢神経系におけるNOの役割等を示してきた。現在、培養細胞を用いて血管内皮細胞の透過性亢進のメカニズム解明に取り組んでいる。

2) 麻酔と自律神経系に関する研究

 心拍および連続測定された動脈血圧の揺れをコンピューター処理することにより、自律神経系の機能状態が解析できる。本法が麻酔の深度や、手術侵襲の生体に対する影響を評価するのに適するとともに、術後の予後評価にも応用できることを示してきた。現在さらに幅広い周術期の評価項目としての応用や、慢性痛患者の治療効果評価への応用などに取り組んでいる。

3) 周術期患者管理に関する研究

 さまざまな手術を含めた周術期の生体侵襲により、術後肝障害、腎障害などの合併症を引き起こしてくる可能性がある。それらを予防するために有効な手段(麻酔法・薬剤等)に関して、様々な仮説を元に前向き臨床研究や培養細胞を使った実験を進めている。また、血管再生治療などの新しい手術・処置を行う場合の、最適な麻酔法、薬剤について培養細胞を使った実験的検討を進めている。

4) 大量出血対応策に関する研究

 周術期患者生命予後に最も関連が深い大量出血に対する最適な対応策について、望ましい輸血指針、有用な輸血製剤、血小板フェレーシスの有用性などの観点から検討を進めている。

5) 痛みの治療に関する研究

 反射性交感神経性異栄養症、CRPS等の神経因性疼痛の治療は困難を極めるものである。これに対して臨床的には硬膜外腔鏡下癒着剥離術、脊髄硬膜外通電療法、自立訓練等のアプローチの有用性を検討するとともに、その発生機序に関して生理学的、免疫学的、及び形態学的な研究への取組が始まったところである。

〔名古屋大学麻酔科の特徴〕

 当教室の特徴として手術部における手術麻酔業務が全体の仕事の半分以上を占めることが挙げられる。手術部における年間約4500例の全身麻酔、硬膜外麻酔、脊椎麻酔を緊急症例も含めて全例麻酔科にて行っている。2006年1月から新手術室に移り、麻酔記録の完全電子化も進めている。現時点での目標は術後鎮痛を含めたより質が高く安全な周術期全身管理を目指すことである。

 疼痛外来では反射性交感神経性異栄養症、帯状疱疹後神経痛などの難治性神経因性疼痛疾患の治療を行っている。現在でもこれらの疾患は確実な治療法が見つかっていないのが現状である。各種神経ブロックに加えて高周波熱凝固法による神経ブロック、NMDAレセプター拮抗作用のあるケタミンによる治療、脊髄電気刺激療法、硬膜外腔鏡による癒着剥離術など行われている。こうした治療法も一般の人々にはまだあまり知られておらず、今後疼痛外来についての啓蒙も行っていきたい。

 現在我々の教室では、血管透過性亢進のメカニズム解明等についての培養細胞を用いた実験を展開すると共に、周術期臓器保護等に関する臨床研究も進めている。今後も、実験系の研究と様々な臨床研究との両面を、量面にも質的にもさらに拡大して推し進めて行きたい。

 
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